フクロモモンガの外傷について

フクロモモンガの外傷とは

フクロモモンガは皮膚が非常に薄く、わずかな外力でも外傷を受けやすい動物です。外傷の原因としては、ケージ内の構造物との接触、他の飼育動物からの咬傷、同居個体との接触やグルーミング、落下や感電などの事故などが挙げられます。
また、フクロモモンガは違和感や痛みに対して過敏に反応することがあり、外傷をきっかけに自傷行為へ移行してしまうことがあります。そのため、外傷の治療においては創部の状態だけでなく、行動学的な側面も考慮した治療方針の選択が重要となります。

症例

動物種:フクロモモンガ
年齢:5歳3か月
主訴:気が付いたところ、右頚部皮膚に外傷がみられた。
現病歴:受傷時期は定かではありませんでした。外傷部位を自身が気にする様子は全くなく、食欲や活動性にも問題は認められませんでした。同居しているフクロモモンガの子が外傷部位を舐めている様子が確認されていました。

治療方針

本例では、外傷部位を自身が気にしていないこと、比較的大きく裂開していましたが、縫合や包帯などの処置をきっかけとして自傷行為が始まる可能性があること、自傷行為が始まった際にエリザベスカラー着用で防ぐことができない部位であることを考慮しました。そのため、縫合などの侵襲的処置は行わず、同居個体との隔離を行ったうえで、抗菌薬の内服による感染管理を行い、二期癒合(*)による創傷治癒を目指す方針としました。

(*)二期癒合について
傷口を縫わずに、体が持つ治癒力によって徐々に傷を埋めていく治療方法です。
組織欠損が大きく縫合できない場合、受傷から時間が経過し、感染リスクが高い創傷や縫合後の安静が保てない場合には、二期癒合が選択されることがあります。

経過

初診から1週間後も、外傷部位を気にする様子は認められませんでした。形成されていた痂皮(かさぶた)を除去したところ、創部には良好な肉芽形成が認められました。
生理食塩水による洗浄を行い、創部周囲の被毛を除去したうえで、抗菌薬の投与を継続しました。
さらに1週間後には、創部はほぼ埋まり、皮膚形成が進行している状態が確認されました。痂皮が消失するまで抗菌薬投与を継続し、治療終了としました。

まとめ

フクロモモンガの外傷では、治療そのものが自傷行為の引き金となる可能性があるため、処置内容の選択には注意が必要です。自傷行為は自咬だけでなく、後肢などで掻くことによる皮膚損傷として認められることもあります。本例では、侵襲を最小限に抑えた治療を行うことで、良好な創傷治癒が得られました。外傷治療においては、個体の行動や反応を十分に観察しながら治療方針を決定することが重要と考えられます。

執筆者:滝野川動物病院 豊島 祐次郎