ウサギの精巣腫瘍とは
オスの生殖器疾患は、メスに比べて発生は少ないですが、その中で発生率が高いのが精巣腫瘍となります。発生は高齢のウサギに起こりやすく、腫瘍の種類によっては悪性の挙動を示し、転移を起こすこともあります。精巣腫瘍は肉眼的に腫大がみられる以外には明らかな臨床症状を示すことは少ないですが、さらに腫大化することによって皮膚表面が破れて出血、感染を起こして生活の質の低下がみられることもあります。
ウサギの精巣腫瘍の診断・治療
診断には、視診で精巣の腫大を確認します。確定診断には精巣摘出後に病理組織検査を行います。
治療は精巣摘出術(去勢手術)を行います。精巣が巨大化して皮膚と固着している場合や陰嚢皮膚が破れている場合は陰嚢ごと切除しなければならないこともあります。
9歳0ヶ月齢のウサギが、前日に爪切りとグルーミングに連れて行った際に左陰嚢の腫れを指摘されたとのことで来院しました。視診で左側精巣の腫大が認められましたが、高齢なこと、腫大も軽度であること、生活の質(QOL)の低下もみられないことからまずは1ヶ月後に再診となりました。1ヶ月後の受診では腫大傾向が認められた為、全身検査を実施し、大きな問題もないこと、今後さらに腫大して自潰(擦れたり感染して皮膚表面が破れてしまうこと)を起こし、QOLの低下がみられる可能性があることから、飼い主様と相談の上、去勢手術を実施することになりました。
症例

術後、陰嚢部の腫れは認められたものの消炎鎮痛剤などの内服をして2週間後には問題なくなり、治療終了としました。

まとめ
本例は腫大していない右側の精巣も病理組織検査では腫瘍化している部分が認められ、両側ともに精巣腫瘍で「ライディッヒ細胞腫」と診断されました。この腫瘍は切除すれば予後は良好とされています。本例のように早期発見できれば手術自体の負担も軽くて済みます。但し、陰嚢(精巣)は普段の姿勢からでは確認することが困難な為、かなり腫大してから発見されることも少なくありません。早期発見には定期的な健診をお勧めします。例えば、見た目は健康であれば爪切りだけの受診でも構いません。当院では口腔内チェックを含めた身体検査も行いますので、気になることがあればお気軽にご相談ください。
執筆者:滝野川動物病院 豊島 祐次郎